安倍首相は、なぜ相模原事件への批判声明を出さないのか
7月26日、優生思想の持ち主の犯行によって、相模原の施設が襲われ、利用者に多くの犠牲が出ました。慎んで弔意を表します。
私も、家人が福祉施設で世話になっているので、他人事ではありません。
新聞報道によると、アメリカのケリー長官、ロシアのプーチン大統領、バチカンのフランシスコ法王が声明を出しているそうです。ケリーの場合は、ラオスからです。
他方、安倍首相は、26日の日本医師会の会合で、「衝撃を受けている。真相究明と再発防止に全力を挙げる」と述べたとされています。
そして、28日の閣議では、「(容疑者の)措置入院解除後のフォローアップが十分でなかった」との指摘が出ていたのに対し、「施設の安全確保や措置入院後のフォローアップなど必要な対策を早急に検討し、できることから速やかに実行に移してほしい」と指示したそうです。
でも、安倍首相は、公式の声明を出さないのでしょうか?
海外の首脳のメッセージは、基本的に、①犠牲者、犠牲者の家族の悲しみの共有、②犯行への非難、によって表されています。
他方安倍首相の伝えられる言動には、①も②もありません。
もしかしたら、少しはそういうことを言った部分もあり、ようく探せばそれも出てくるかもしれません。
しかし、それは本来、事件直後の新聞の第一面に、しっかりと載るような形で発せられるべきものです。それがないことの異常性を、認識すべきです。
「再発防止」のために、すぐできて効果的な、「犯行を非難する」、ということを何故やらないのでしょうか。
今回、植松容疑者は、2月の段階で衆議院議長大島理森氏あてに、次の手紙を提出しています。
世界を担う大島理森様のお力で世界をより良い方向に進めていただけないでしょうか。ぜひ、安倍晋三様のお耳に伝えていただければと思います。
作戦を実行するに私からはいくつかのご要望がございます。逮捕後の監禁は最長で2年までとし、その後は、自由な人生を送らせてください。心神喪失による無罪。
新しい名前(伊黒崇)本籍、運転免許証等の生活に必要な書類。美容整形による一般社会への擬態。
金銭的支援5億円。
これらを確約していただければと考えております。ご決断いただければ、いつでも作戦を実行致します。・・・安倍晋三様にご相談いただけることを切に願っております。
これを見ると、容疑者の側は、明らかに安倍政権を自分の仲間(同じ思想や行動を目指すもの)と考えています。
ただ仲間であるだけでなく、自分の持っていない、権力や金力を持つものとして認識しています。
そこで、仲間の中での自分の効果的な役割を提示し(「犯行プロジェクトのプレゼンテーション」)、それを5億円という金額でセールスし、犯行後の「優遇」を求めているのです。
安倍政権の再発防止が本気であるならば、何よりも、安倍政権が、容疑者のような人々と「仲間」でないことを明確に宣言する必要があるでしょう。
海外の首脳や政府がこの事件に対しメッセージを寄せているのは、現在の国際情勢を考えると、当然です。
それらの諸国は、ISとの闘い、テロとの闘いを旗印とし、実際には多くの市民の犠牲を出しています。
そうした中で、自分達の行為を正当化するために、国際的レベルでも、常に、上記①②を明らかにすることに敏感になっているのです。
そして、それらの諸国は、今回の日本のこの事件をテロととらえたのです。
ドイツの場合は、大統領から天皇へ、ドイツ外務大臣から日本外務大臣へ、在日大使から神奈川県知事へ、弔意が示されています。ナチスの優生思想に関する言及はないものの、それが想起されたことは間違いないでしょう。
このテロの政治的意味、政治的背景についてはこれからさらに議論されていくでしょう。
しかし、何よりも安倍政権の対応の異常さを指摘する必要があります。
それがないマスメディアも異常です。