hajimetenoblogid’s diary

このブログは、反安倍ファシズムのすべての人々と連帯するために、米村明夫が書いています。

どこまでも、天皇をバカにした政府「退位法案」--法律はポエムじゃない

 6月10日(土)14時から、「止めよう、辺野古埋め立て」「共謀罪法案、廃案」国会包囲行動が、「総がかり実行委員会」等の主催で行なわれます。

 皆で参加しましょう。

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 水島朝穂氏は、安倍首相のやり方を、時々「無知の無知の突破力」と評しています。

 言い得て妙です。

 安倍首相は大学を出ているようですが、とても勉強したことが身についているとは思えません。

 私は、学歴の高い人、教養のある人が偉い、という気はありませんが、権力を持った者に対しては、本人が教養を持つか、あるいは知に対する敬意を持つことを、要求します。

 何故なら、学問には人類の経験が凝縮されているからです。その意味では、誤解を恐れずにいえば、権力者は、芸術や宗教に対しても、敬意を抱くべきだと思います。

 欧米の政治エリートを見ていますと、少なくとも建前として、そうしたものがあるように思います。

 ですから、トランプのような人物は、エリートの中からは出てこれないのです。

 何故、日本では安倍首相のような人物--学者に敵意を抱いているような印象すら受けます--が政治エリートの中にいるのか、というのは興味深いテーマですが、今回議論したかったのはそこではありません。

 彼の周りに、歴史や学問を恐れない軽薄な人物(東大名誉教授・教授を含め)や官僚が集って、これまでに蓄積されてきた真面目な学問、仕事、その成果をあざわらっているかの如くのやり方に対し、私は強く怒りを覚えます。

 その点でも、政治的立場を超えて多くの人が一緒に抗議の声を上げていけるし、上げていかなければならないと思います。

 今回の天皇退位問題をめぐって、去年の夏以来、大量の議論が新聞などで流されてきました。

 私も、それでずいぶん勉強させてもらいました。

 ただ、傾聴すべき学者の意見は、「上品」すぎて、一般の人には届きにくいところがあります。

 そこはマスコミの記者がうまく咀嚼して、読者などに、問題の本質を届けなければならないでしょう。

 しかし、実際には非常に平面的・表面的に情報が流されていくので、大量の情報の中で、すべてが薄まり、何となく政府の言うままにものごとが流れていきつつあります。

 理解の枠組みも、ちゃんと問題を整理して理解するというものではなく、事実の後追いや政府の説明の仕方がそのまま理解の枠組みとされ、それでものごとが流されていきます。

 今回の退位法案では、それを特例法にするか通常の法(皇室典範の改正)にするかは重要な論点でした。

 そのことの本質をちゃんと言及してくれていた学者も多いのですが、ごまかされたまま進んでいます。

 今回私は、ブローグのタイトルでも示したように、改めて、特例法という欺瞞の本質を指摘、議論したいと思います。

 

 

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 上に、新聞から法案の第三条までを張り付けました。

 これから、第一条を議論します。そのため見やすくして、以下に第一条だけを、引用します。

 

第1条(趣旨)

この法律は、

天皇陛下が、昭和六十四年一月七日の御即位以来二十八年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、

②八十三歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること、

③これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下お気持ちを理解し、これに共感していること、

④さらに、皇嗣である皇太子殿下は、五十七歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、

皇室典範(昭和二十二年法律第三号)第四条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとする。

 

 この第一条は、見るからに異様です。

 上の新聞記事の第二条以下を見ると、「天皇」という表現が使われていることがわかりますが、この第一条は、「天皇陛下」と敬称付きとなっており、この条項だけ全体に敬語が使われています。

 法律に敬語って、見たことがありません。日本国憲法の精神から言っても、「法の下の平等」という考え方一般から言っても、こんなのが許されるわけがありません。

 こんなものを法律として出してくる「法律家」の感覚が、どうしようもなくアウトですね。

 まあ、それはともかくとして、この敬語用法と年齢などが書かれていることで、「天皇陛下」が、現在の天皇を指していることがわかります。

 憲法皇室典範での「天皇」あるいはこの法案の第二条以下の「天皇」が、「天皇の地位」一般を意味していることと差異化しているのでしょう。

 こうして、この第一条は、この法律が現天皇のみに関わることだ、ということを特定、特例としている点--特例法というこの法律の基本性格--を明らかにしたものである、というわけです。

 ところが、新聞報道によると、この特例法を作るための有識者会議会議の座長をした御厨貴東大名誉教授は、「今後、今回の事例は必ず参照される」と述べ、また、衆議院の正副議長国会見解にも、「先例となり得る」と記されているとのことです。

 これで御厨氏らが言いたいのは、天皇や国民の「特例法ではなく、普通の法で」という意見に対し、「この特例法でも、普通の法とあまり変わらないよ」ということでしょう。

 

 どこまで、天皇と国民と法律というもの、法治というものをバカにしているのでしょうか。

 この特例法は、単なる特例法(単に今回に限ってこうするとした法令)以上に悪質なものといえます。

 一見、敬語を使って天皇を敬っているようですが、そして、「今後、必ず参照される」から、問題が解決されるようですが、実は全く逆で、天皇をバカにし、単なる特例法の場合以上に、問題は深刻化したとんでもない代物です。

 天皇から見れば、こういうものを「今後、必ず参照される」ということは、私が以前に言った「奴隷的天皇制」を続けるということなのです。

 「今後、必ず参照される」ということがどういうことか、具体的に考えてみましょう。

 上記の第一条の条文から、参照されることというのは、以下の点が今後の退位の参照条件となるということです。

 

②「八十三歳という高齢」「活動維持が困難」

③「国民による天皇退位への理解と共感」

④「皇太子が五十七歳」「国事行為の臨時代行等を長期勤務」

 

 どれ一つとっても、まともな法律的要件をなしていません。

 ②について言えば、「70歳は『高齢』ではないのか?」「75歳は?」「活動範囲が決まってなければ、活動維持が困難かどうかは決まりようがない」

 ③は、「理解と共感がないと退位できない?」「理解と共感があった方が早く退位できる?」「その逆?」

 ④は、代替わりするための条件というよりは、「まあ、それなら選手交代もありか」みたいな、気分の話のようなことが入っています。

 

 私は、④について「気分のような話」と書きましたが、実際にそうした場面では大まじめに、それらしく理由付け権威づけの材料として、いかようにも用いられるのでしょう--例えば、皇太子が30歳だと「まだ若すぎるから、もう少し、天皇に続けてもらおうか」等--。

 

 これら、3つの条件の組み合わせとなったら法律的要件どころか、権力者の自由自在、何とでもなる--御厨氏のように「役立つ」人物は、いくらでも擦り寄ってきてくれますから--というのが、この特例法の本質です。

 次の天皇がまた退位したいと言ったら、また「有識者会議」が作られ、ああでもない、こうでもないと上の3つの条件をもっともらしく議論して、政府のいうとおりに結論を出すのでしょう。

 

 こういう法案を作成する官僚は、国民を騙す手腕に自分で酔って「おれって頭良い」とか思っているのかもしれません。

 でも、官僚の中にも法律のプロはいるはずで--というか本来彼らは全員プロのはずですね--真面目な人は泣いているのではないでしょうか。

 共謀罪法案もそうですが、法律の文をわざと曖昧にして恣意的な運用を諮る--現政権の下では、歴史も神をも恐れない「無知と無恥による暴政の輩」が跋扈しています。 

 これを糾弾せずにいられません。

 

 私は、今の象徴天皇制を前提とするならば、天皇も生身の人間なのですから、「定年制になると権威がなくなる」とかの蒙昧な議論は無視して、例えば70歳、75歳くらいの定年制にしてそれを、皇室典範改正での恒久法措置とすべきと考えます。

 それは、政府の責任であり、国民の責任でもあります。