hajimetenoblogid’s diary

このブログは、反安倍ファシズムのすべての人々と連帯するために、米村明夫が書いています。

何故、安倍内閣支持率が上がったのか?--「シンガポール共同声明」へのネガティブ・キャンペーンがもたらしたもの

 共同通信社が6月16、17両日に実施した全国電世論調査によると、内閣支持率は44.9% でした。これは、5月12、13両日の前回調査と比較すると、6.0ポイント増加しています。この結果、今回不支持は43.2%なので、支持が不支持を上回ることになってしまいました。

 世に倦む日々氏は、また、自民党の支持率が、「報道ステーション」の世論調査では、「自民党支持率がが47.7%で今年に入って最高値。前月より6.3ポイント増」ということも指摘して、「何でこんなことになっているのか」と問題提起をしています。

 そして、自らの回答として、安倍政権と北朝鮮による拉致の被害者家族会が結託しており、安倍政権が苦境に陥りそうになると、安倍イメージをアップするように後者が前面に出て、国民的な同情を集め、それが功を奏している、という仮説を提出しています。 

  私は、世に倦む日々氏の仮説と関連はしますが、もう少し広い観点からの仮説を持っています。

  共同通信世論調査では、北朝鮮の非核化について、「実現すると思う16.4%」「実現すると思わない77.6%」となっています。

 6月12日の米朝会談の成功、その成果である「シンガポール共同声明」は、東アジアにおける平和への大きな動きを記すものです。

 しかし、日本のメディアは逆に不安を掻き立てています。メディアは、「シンガポール共同声明」によって、日本はより安全になったというよりも、より危険になったような印象を与え続けているのです。

 世論調査結果の「実現すると思わない77.6%」は、このようなメディアの影響を示すものであり、それは当然国民の不安の広がりを示唆するものでしょう。

 私は、この不安の増大こそが、安倍内閣自民党の支持率を増加させたものと考えます。

 この不安は、国民の間に「ネーション(国民共同体)感情」を強めるものとして機能しており、そして「ネーション(国民共同体)感情」の強まりが、安倍・自民党支持率の増大につながるように機能しているのです。

 この「シンガポール共同声明」以後にもたらされている不安の問題は、単にそれが量的に増大したというよりも、質的に新たなもので、今までに経験のない不安であることに注意すべきです。

 つまり今、国民の間では、「アメリカがこれまでと違って、日本の頼りある味方になってくれない、完全非核化しないと日本が危ないのに」「(とてもできそうもないけれど)『自分』の頭で考えて、どうするか決めてやっていかなければならないのか」という新しいタイプの漠然とした不安が広がっているように思います。

 この新しいタイプの不安は、「ネーション(国民共同体)感情」を強める機能を持ち、「日本国民はともかく一致団結しなければならない」「自分達のリーダーは有能であって、すべてをうまく解決できる」という感情・願望・思い込みを強化することになります。

 そうした中で、安倍政権を信頼しているわけではない人々の間でも、積極的にオールタナティブを選ぶよりも、消極的であれ、現にある政府、何といっても一番頼りになりそうな自民党に支持を与える、という態度が顕著になっているのではないでしょうか。

 世論調査によれば、「北朝鮮による日本人拉致問題朝鮮半島の非核化に対する安倍内閣の外交をあなたは評価しますか、しませんか」という問いに対し、「評価する44.2%」「評価しない46.1%」となっています。

 この質問では、外交ということで、拉致問題朝鮮半島の非核化とを一緒に質問しています。つまり、基本的に対北朝鮮外交(政策)を扱っています。

 また「安倍内閣の外交」という時、それは、「シンガポール共同声明」以前の外交を指すのか、それ以降の外交政策を指すのか、あるいはその双方全体を指すのか明示されていません。

 しかしこの質問の前に、「シンガポール共同声明」による北朝鮮の非核化の実現についての質問や「安倍首相が意欲的」である日朝首脳会談についての質問を行なっていますので、回答者の意識としては、「シンガポール共同声明」以降の外交政策が評価対象となっていると考えて良いと思います。

 つまり、「評価する」とした44.2%の回答者達は、「シンガポール共同声明」以降の情勢認識の中で、今後の対北朝鮮政策を肯定的に評価していると考えて良いでしょう。

 当然ここにも、先に述べてきたような新しいタイプの不安が反映していると考えられます。

 拉致問題に関しては、「日本人として、当然交渉し、拉致された人々を返してもらわなければならない」という気持ちは誰もが持つでしょう。

 世論調査を見ますと、「安倍晋三首相は、北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け、金正恩委員長との会談に意欲を示しています。日朝首脳会談を開催すべきだと思いますか」という質問に対し、「開催するべきだ81.4%」「開催する必要はない13.3%」となっています。

 「開催するべきだ」が圧倒的多数なのは、当然だと思います。

 しかし、今まで米国の尻馬に乗るような形で北朝鮮に対する強硬路線を声高に叫んでいた日本が、いやでも交渉主体として(あまりに当然ですが、日本のこととして)北朝鮮と交渉しなければならない、ということになったのです。

 「あの『凶暴』で、トランプを相手にしてすら『勝利』を収めた北朝鮮とうまく交渉していけるだろうか」という不安を感じています。

 さらにまた、今や正面からこの問題に向かい合わなければならなくなったのですが、その結果、「拉致問題の解決」と呼ぶもの(政府やマスコミや自分もそう呼んでいるもの)についても、それが何であるのか、薄々疑問を持ち始め、自信がなくなり始めています。

 「拉致問題の解決」は、政府の政策とされていますが、それはあまりに漠然としており、国内向けの響きを意識した「北朝鮮に対する強い要求」の開陳というようなもので、外交政策と名付けるべき実質を持っていません。

 例えば、日本政府が主張している拉致被害者が生存していない場合、何が「解決」なのか、誰にもわかっていないし、誰も説明しないのは妙なことです。

 しかし、また関係者もそれについて問題提起しようとしていません。これも妙なことです。

 ただ、こうした国民の間にある不安、自信喪失を打ち消すものとして、安倍首相と拉致被害者家族会がテレビに出てきます。*1

 安倍首相はこの件について自らの努力や拉致被害者家族とのつながりを強調し、少なくないメディアがそれを肯定的に大きく取り上げてきました。

 それは、現時点において「拉致問題の解決」という「外交政策」が説得的であるというよりも、繰り返しになりますが、それを改めて声高に「確認」することが、国民の間にある(メディア自身の間にもある)不安、自信喪失を打ち消すものとして機能するからです。

 こうした結果、世に倦む日々氏が指摘するように、安倍政権による「拉致問題の解決」が人々によって支持されるようになっているのです。

 

 以上、不安の増大とそれに基づく安倍政権支持率の増大について述べてきましたが、他方、そうした不安の増大にも関わらず、安倍政権への支持が過半数に届いていない、という事実も見逃すべきでないと思います。

 先に、「安倍内閣の外交」について「評価する44.2%」という数字を見ました。

  「評価する44.2%」は、「内閣支持44.9%」とほぼ同じ数字です。もちろん、この「評価する」の回答者との内閣支持の回答者が、そのまま重なりあっているということはできません。しかし、高い程度で重なり合っているのではないでしょうか。

 こうした数字は、国民の半分以下です。

 私が指摘してきたような不安が広がっている中で、安倍政権が実際に北朝鮮との外交を行なうという事態に対し、「交渉を行なう以上は、ともかく政府を支持しよう、ともかくその交渉(政策)は支持しなければならない」という心理を持つ者が確かに増大しています。

 しかし、そうした者は、国民の半数以下に止まっているのです。この事実は肯定的なものとして見逃してはならないでしょう。

  国民の多くが、安倍政権のテレビでのパフォーマンスをまだ冷静に見ているのです。

 

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 私は、「シンガポール共同声明」の平和への意義が積極的に理解できるようにする環境を作る必要があると思います。

 それによって、以上のべてきたような日本国民の間に広がりつつある、新しいタイプの不安の広がりをくい止めたい、と考えています。

 そのためには、「シンガポール共同声明」に対する攻撃について、理論的視点から対抗していくことが、実践的に重要性を持つと考えます。

 

 そうした作業を、次回以降に行なっていく予定です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:私は、「拉致被害者家族会」と安倍政権の具体的な関係について、断定的なことを言うことはできないので、その点は保留します。