hajimetenoblogid’s diary

このブログは、反安倍ファシズムのすべての人々と連帯するために、米村明夫が書いています。

「平壌共同宣言」を生み出したすばらしい韓国外交--「非核化」交渉をどう理解するか(その2--交渉の難行と「深展」)

 最初にクイズを出します。 

板門店宣言」における「画竜点睛」の「点睛」にあたるのは何か?

という問題です。

 私は、今年4月の南北会談、「板門店宣言」に始まった韓国の外交を、創造的なものとして評価してきました。この創造性を集約的に示す「点睛」が、「板門店宣言」ではキラッと輝いているのです。

 ところが、例えばその直後の朝日新聞の社説(4月28日)では、「宣言の他の中身は、07年の前回に出た南北共同宣言から大きな進展はなかった」等と書いていました。

 このように言う人には、この「点睛」が見えていなかったのでしょう。

 他方、ずっとこの「点睛」を見せつけられてきた米国の「産軍複合体ムラ」、強硬派の面々は、これで韓国にしてやられた、と恨みと悔しさを募らせているに違いありません。

 このクイズの答は、私が最初に「板門店宣言」を取り上げた時に書いているのですが、もう一度言いましょう。

 それは、

 

南と北は停戦協定締結から65年になる今年に、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制の構築のための南北米3者、南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした。 

 

という重要項目の頭に、 「停戦協定締結から65年になる今年に、」という期限を付け加えたことです。

 この付加が絶妙ですね。この宣言が出されたのが4月末ですから、年末までまだ8カ月あるので、急ぎすぎ、という感じは免れますし、「停戦協定締結から65年になる今年に、」という表現は、単に「今年に」というのと異なった「時間もかなり経過したし、メモリアルな区切りも良いし」といったニュアンスがあって、自然な感じ(あえてそれに抵抗する方が「おかしい」感)があります。

 今起きていることは、この画竜の点睛が、米朝による「シンガポール共同声明」の合意を通じて、さらに輝きを増して、現実を動かしているということです。

 私は、6月の米朝会談に関して、それがその後に「予定」されている「終戦宣言」への橋渡しとすら言える、と書いてきましたが、その通りになってきています。

  FOXニュースでの発言として聯合ニュースは、次のように伝えています。

 

【ニューヨーク聯合ニュース

文大統領は、終戦宣言について前日のトランプ米大統領との首脳会談で十分に議論しており、2回目の朝米首脳会談でも議論されるとの認識を示し、「できるだけ早いうちに終戦宣言を実現することが望ましいという共通認識がおおむねできたと考える」と述べた。

 

 これに呼応するように、一昨日「朝日新聞」、「産経新聞」、「毎日新聞」、「日本経済新聞」等が、昨日は「東京新聞」が、「トランプ氏 非核化 期限を設けず 米国務長官 来月訪朝」といった見出しの報道を行なっています。

 まずは、「終戦宣言」の展望が見えてきたといって良いでしょう。

  韓国外交の巧みさ、「終戦宣言」実現への柔軟さ・賢明さを伴ったエネルギーの強さが際立つ、先に引用したFOXニュース(文大統領へのインタビュー)をもう少し詳しく見ておきましょう。

 

【ニューヨーク聯合ニュース

     ・・・・・・

 国連総会のため米ニューヨークを訪れている文大統領は25日、米FOXニュースとのインタビューに応じ、終戦宣言の年内実現という目標は達成可能だと強調した。

 文大統領は、終戦宣言について前日のトランプ米大統領との首脳会談で十分に議論しており、2回目の朝米首脳会談でも議論されるとの認識を示し、「できるだけ早いうちに終戦宣言を実現することが望ましいという共通認識がおおむねできたと考える」と述べた。

 非核化措置を取る前の終戦宣言を要求する北朝鮮と、これに応じない米国が対峙(たいじ)してはいるものの、終戦宣言の必要性については南北と米国の3者に異論がないことを強調したものだ。文大統領は、朝米非核化交渉の「入り口」または北朝鮮が初期の非核化措置を履行した段階で終戦宣言を行い、交渉に勢いをつけたいと考えている。

 文大統領はあわせて、北朝鮮の非核化措置に対する米国の相応の措置を強調。北朝鮮が要求する終戦宣言などの相応措置へ米国が迅速に動けば、非核化の動きも加速するはずだと指摘した。

  

 要するに、ここで述べられているのは、「シンガポール共同声明」で米朝首脳によって合意された「完全な非核化」と「安全の保証」の交換という大枠に基づく、その段階的・相互的な実施です。

 その上で、「終戦宣言の必要性については南北と米国の3者に異論がないことを強調」している、というのですから、もう「終戦宣言」がなされるための条件整備(それを実現するための現実的な合意点形成)がなされつつあると理解して良いでしょう。

 では、文大統領は「非核化」と「終戦宣言」のどちらを先にといっているのでしょうか?

 このインタビューを扱った記事の先を読んでみましょう。

 

・・・・・・・・

 文大統領は、相応措置の一つに挙げられる対北朝鮮制裁の緩和と関連し、「仮に制裁を緩和するようなことがあっても、北が欺いたり約束に背いたりすれば制裁を再び強化するまでだ」とも述べた。

 あわせて、北朝鮮に非核化を促すため韓米が中止した合同軍事演習の再開の可能性に言及したほか、終戦宣言についても「政治的な宣言であり、いつでも取り消すことができる」と強調した。

 

 これは、北朝鮮に対し強い姿勢で非核化を求めたものと言えます。

 トランプは、非核化がはっきりと認められるまでは制裁は緩和しないことを繰り返し述べていますし、軍事演習再開についても比較的最近ツウィートで言及していました。

 ですから、こうした韓国の姿勢は、米国との同調を示すものといえます。

 と同時に、実は、「終戦宣言」について米側に譲歩を暗黙的に求めたものとも言えるのです。 

 米側は「終戦宣言」が一度なされると取り消せない(不可逆的である)ということを、「終戦宣言」を先に行なうことへの否定的な態度の理由にしていました。ところが、文大統領は、「終戦宣言」が取り消し可能だと言っています。

 つまり、「終戦宣言」を行ない、それで非核化が約束通り進まないなら、取り消せば良い、(だから、まずは「終戦宣言」を行なったらどうか)とサジェスチョンしているのです。

 制裁についても同じように理解できるでしょう。つまり、米国や国際社会に対し、まずは北朝鮮の言うことを信頼して制裁を緩和して、非核化が進まないなら、制裁強化したらどうか、と(暗黙的ながら)提案している、と。

 そして、実際に、制裁一辺倒、非核化のみの狭窄的議論が蔓延していた世界を、当事者・主体として、対話と平和構築の方向へとじわじわと変えてきています。

 私は、そうした結果として、メディアの現在の状況と今後を次のようにまとめて良いと思います。

 第1に、その視点・語り口の適切性は別として、今や「終戦宣言」に衆目が集まりつつあること、そのことをメディアも避けることが出来なくなって、「終戦宣言」が重要なテーマとなってきていることです。

 第2は、そのように「終戦宣言」に関心が集まってくれば、ものの道理として、「終戦宣言」がなされることは文句なしにすばらしいものであること、それを阻止しようとする論理が「屁理屈」であることが、自ずと明らかになってしまうだろうということです。

 私は、先に

 

 私は、6月の米朝会談に関して、それがその後に「予定」されている「終戦宣言」への橋渡しとすら言える、と書いてきましたが、その通りになってきています。

 

等と、自画自賛めいたことを書いてしまいましたが、これは、「私の予測があたった」というようなことを言いたいのではありません。

 私が言いたいことは、「板門店宣言」や「シンガポール共同声明」を偏見なくきちんと読めば、当事者達がその合意通りに行動する限り、必然的に進むコースである、そういうふうに、それらの文書には書いてある、ということです。

 確かに交渉は難行してきました。これからも難行するでしょう。常識的に考えて、「完全な非核化」と「安全の保証」の交換を具体化する交渉が簡単な訳がありません。

 しかし、現時点で、交渉が「進展した」と言い難いとしても、トランプと正恩双方に交渉の意志が持続しており、妥協点を見出そうとしている、というだけでも、朝鮮半島情勢の歴史的な転換が深いところで始り、現実化しようとしていることを証拠立てている、といって良いと私は考えます。

 私はこのような現実の深いところでの変化の兆しを、情勢の「深展」と呼ぶことにします。難行していると見える交渉のレベルでも、そうした現実の「深展」が反映した状態にあると考えれば、全く異なった展望が見えてきます。

 しつこく繰り返しますが、こうした変化の推進力として、韓国外交があります。

 

 

 ところで、特に日本のメディアは、未だに制裁一辺倒、非核化狭窄症をひきずったままです。

 私は上記でメディアの現在と今後を2点にまとめました。

 次回では、最近の新聞記事などを取り上げ、日本のメディアの現状が、私が指摘したこの2点にどう当てはまるか、というような形の議論をしたいと思います。

 その議論は、「板門店宣言」に始まる韓国外交が提起したこと--平和構築のための新しい枠組み--が現実化しつつあること、この枠組みの重要性を再確認するものとなるでしょう。