都知事選の敗北と野党共闘のゆくえ(1)
都知事選では、石原慎太郎氏と同じ極右の人物である小池ゆりこ氏が勝利し、野党共闘の鳥越俊太郎氏は、自民公認の増田寛也氏にも負ける残念な結果となりました。
都知事選の敗北について、いくつかの議論を読みました。多くが、鳥越氏が都政を知らないまま、安易に立候補し、野党共闘勢力が、それを不透明な形で支持した経緯を指摘し、批判しています。
私は、日本全体の政治状況に強い危機意識を持っていますので、それらの論評とは別に、この機会に、都知事選だけでなく、より広い角度から、この数年を振り返りつつ、野党共闘について議論をしたいと思います。
私は、野党共闘の実現過程での内情を知る者ではありません。しかし、基本的にそれを支持してきましたし、これからも他に筋の通った選択肢が現れない限り、それを支持するつもりです。
ただ、私は安倍ファシズム政権に反対する統一戦線という立場から、野党共闘の問題点を指摘してきましたし、現時点でのその問題の重さを、改めて述べたいと思います。
この秋には、南スーダンへの駆けつけ警護のための自衛隊派遣が迫っています。
そこで死傷者が出てしまう可能性が現実のものとなっています。
死傷者が出た時に、日本はどうなるのでしょうか。
テレビで、「戦争法が成立していなければ、このような事態にはならなかった」と発言するコメンテーターが一人でも現れるでしょうか?
野党共闘の議員はどう発言、行動するでしょうか?
「今こそ、戦争法を廃止すべきだ」と発言すれば、それはすぐに、「国のための死傷者を、政治利用するな」という、それこそ「政治的」な目的を持った、死傷者を政治利用する勢力に操られた人々の発言によって炎上させられるでしょう。
政府は、建前が「駆けつけ警護」なので、「これは戦争の死傷者ではない」と言うでしょうが、同時に実際には、戦争時並みの扱いのための法律や手続きを制定するでしょう。
そして、この問題を、政権の都合のいいように「聖域化」して、報道や社会に対し、関連する情報とその解釈を独占、統制するようになるでしょう。
最近のアメリカの事例もヒントをくれます。
アメリカの共和党のトランプ大統領候補は、言いたい放題をいってきて、それが通ってきた人物です。しかし、軍人遺族の民主党大会での発言をけなしたことが、関連する多数の軍人遺族から謝罪要求の公開書簡を始めとして、共和党内からも強い批判を呼び起こしています。大統領選に影響を与えつつあります。
軍人の犠牲者--特に今回のように英雄視されていた犠牲者--は、アメリカ人にとっての「聖域」を構成する「聖像」となっているからです。
今の日本の流れを見ていますと、日本も、あっと言う間にそうなってしまうでしょう。
私は、ただ、「戦争法が成立していなければ、このような事態にはならなかった」というように感じる人が一人でも多ければ、そうした流れをくい止める力を増やせると思います。
そこで、野党共闘の話です。先に野党共闘の議員がどう発言、行動するか?という疑問を提出しましたが、実際のところ、どうなのでしょうか?
参院選にあたっては、次のように政策協定が結ばれました。
民進、共産、社民、生活の野党四党は七日、参院選での野党共闘を呼び掛ける市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」との間で、七月の参院選に向けた政策協定を結んだ。
・安全保障関連法廃止
・立憲主義の回復
・改憲阻止
などが柱。
・・・
・米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設反対
・環太平洋連携協定(TPP)合意への反対
・原発に依存しない社会の実現に向けた地域分散型エネルギーの推進、
なども盛り込まれた。
(2016年6月7日 東京新聞夕刊)
ここには、安全保障関連法廃止が、第一番目に明記されています。私は、協定に調印したすべての政党と団体に、この約束を堅持することを求めます。
しかし、正直なところ、特に民進党に関しては、不安と不信感を覚えます。
次回に続けます。